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コラム:週刊モンモントーク

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[67] 鉄道の魅力

1.鉄の道
二本のレールがどこまでもずっと伸びている、都会の喧騒、その陸橋の下を、あるいは避暑地の寛憩、その海岸沿いを、あるいは大自然の静寂、その地平線の果てまで、その平行線を崩すことなくすっと伸びている、その車輪との接地面が磨かれた鏡のように光に煌めく。まさしくそれは、鉄で作られた鉄の道。

そして、ガラゴロガラゴロガラゴロ...というリズムに乗った心地よい音と共に個性豊かな列車が走り抜ける、黒金に光る大動輪に汽笛を響かせ蒸気機関車が、何十両もの貨物列車を引いてディーゼル機関車が、満員の人々を乗せた赤や青の通勤形車両が、時速300kmで疾走する16両編成、エアロ・ダブルウィング新幹線が...。

走り去った後には、一瞬の余韻の後、周りのざわめきが、あるいは静寂が、ひと際、際立って浮かび上がる。ふと我に返った視界には、二本のレールがどこまでもその平行線を崩すことなくずっとすっと伸びてるだけ...。

2.鉄道
近代鉄道は、19世紀初頭のイギリスで生まれた、それは、17世紀に萌芽し18世紀を通じて育った、もっと自由にさらに自由にという近代思想の一つの帰結、必然だった。何らかの束縛を解き放とうとするかのように、またたく間に欧州全体に鉄道網が張り巡らされ、ドイツは3B政策でバグダッドを、ロシアはシベリア鉄道で極東を目指す。

イギリスはアジアで初めての鉄道をインドで敷設、アメリカは大陸横断鉄道で東海岸と西海岸を連結、中国を支配してたはずの大清帝国はなすすべもなく列強の鉄道利権の草刈り場と化し、鉄道は帝国主義政策に必要不可欠となる。すべて19世紀中葉の出来事、当初60km/時前後だった速さは、世紀末には最高160km/時を達成する。

やや遅れて1872年新橋-横浜間で初の鉄道を開業させた日本は、東海道線、山陽線(広島まで)を15年余りで開通させる等、欧米以外の国で唯一、富国強兵、文字通り大動脈としての鉄道を全国に敷設していった。

3.豪華列車
今でこそ国内でも様々な豪華列車が走るが、元祖豪華列車と言えば「オリエント急行(Orient Express)」、1883年10月4日パリ・ストラスブール駅にゆっくりと入線してきた白の車蓋、濃紺の車体に金のエンブレムには "des grands express européens"の文字、構内の発車標には、"Paris-Vienna-Constantinople"の表示。

コンスタンティノープルは既にイスタンブールと改名されてたんだけどね、オスマン帝国の首都として。それは、1453年に滅亡した東ローマ帝国への哀愁の表れか、500年ぶりに優位にたった帝国主義的自信の表れか。

ただ、ボスポラス海峡を越えてこそ本当のアジア(オリエント)、てことは、1988年9月5日パリ発東京行きの「オリエント・エクスプレス'88」こそ、真のそれ。シベリア鉄道を経由、中国を縦断、香港から海路日本へ東京終着、100年前の夢が現実となった瞬間、日本がもっとも輝いてた頃。...その3年後、91年にはバブル崩壊を迎える。

4.高速鉄道
戦前日本の弾丸列車構想は、東京-大阪-下関と、そこから海底トンネルで朝鮮半島の釜山へ、そして、ソウルを経て、満州国の首都新京(長春)や北京まで高速鉄道で結ぼうというもの。日本は南満州鉄道で超特急「あじあ号」を最高速度130km/時で走らせてはいた。そして、シルクロード経由ベルリンまでの机上空想プランもあったとか!?。

ただ、国内に関しては本気度100%で、用地買収やトンネル掘削を進めており、戦後の新幹線計画にそのまま利用されている。東京オリンピックの年、1964年に開業した新幹線は210km/時、翌年には東京-大阪を3時間10分で結び、航空機や自動車のモータリゼーションに劣らず、いやそれ以上に高度経済成長を牽引する。

現在、東海道新幹線で最高285km/時、東北新幹線で320km/時での営業運転は、世界的には標準だけど、その世界の今も、日本の新幹線が高速鉄道の有用性を示したからこその今、創造とは何かを教えてくれる。

5.自由への意志
創造とは自由への意志、鉄道の魅力は人の生き様そのもの、どこまでもいつまでも、遠く速く果てまでも力強く疾走する個性豊かな車両たち。ずっとすっと伸びる二本のレールが確固たるその可能性を目に見える形に具現化する。誰だってこの上を走っていける可能性はあるのだと、自分らしく生きられる可能性が少なくともある、と。

そして、知っている、そのレールから外れることは出来ないのだと、自由なようで自由ではない自由、本能的に知っている自由ではない存在としての自己、でも、この先に何があるのか、誰が待ってるのか知りたい、だから鉄道に惹かれる。鉄道の魅力は人の生き様そのもの、束縛の中での可能性という自由の追求、偶然なのか必然なのか。

道なき道を行くのではない何かに導かれる安心感、が、永遠に解けない疑問、分岐点に差し掛かる時そのポイントを切り替え進む方向を決定するのは誰?。自由とは確固たる文化があっての意志の発露、自由って本当に自由?。

6.エピローグとしてのモノローグ
鉄道ファンには「乗り鉄」「撮り鉄」を始め様々なマニアがいるが、「レール鉄」、それも、製造年月や敷設場所でなく、レールそのものを、平行にずっと伸びてるレールそのものを眺めるのが好きなオタクはどのくらいいるのかな。

もちろん先頭車両や最後尾の車窓にかぶりつき、風景の移ろいと共にそのレールが刻々と車両の下を流れ去る、それも至福の時、が、ただレールそのものを、平行にすっと伸びてるレールそのものをただ、眺めるのも最高の一興。

かつて家族旅行で「海だよ見てごらん!」という母の言葉を聞かず、左手に広がるその海でなく、右手に道路に沿って続く鉄道の線路をずっと見てた少年の心が蘇る、列車は走ってない、走ってったのは、煌めく二本の光...。





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