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コラム:週刊モンモントーク

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[44] 「明白なる運命(Manifest Destiny)1.0」

1. 「運命がドアを叩く」
♪ ジャジャジャジャ〜ン♪ジャジャジャジャ〜ン...と陳腐な始まりだけど、あの曲を一般に「運命」と呼んでいるのは日本だけ、っ て書けば、少しはマシな出だしかな?。世界では、Symphony No.5(Beethoven)、運命がドアを叩いてるって、みたいなことを弟子が言ったことは確か、でも、ベートーベンが何を感じ何を思ってたかはわからない。

でも、運命ってあるの?というか、運命っ て何?、「これは運命だ」とか「運命的な出会い」とか言った時それって、運命的に以前から決まってたの?、それとも、あり得ない確率でたまた ま、運命的に起こったの?。つまり、必然なの?偶然なの?、運命って変えられるの?られないの?。つまり、自由意志はあるの?ないの?。

誰かがドアを叩いていると気づいたとき人 はどう振る舞う?、「いらっしゃい!」と歓迎する?、「誰だ!?」と身構える?。しかしそれが運命だと気づいた時、しかもそれが「明白なる運 命」だと確信したとき人は、何を感じ何を想う!?。

2. 「明白なる天命」
「東方見聞録」の黄金の国ジパングに惹かれたコロンブスにとって、800年近くに渡ったレコンキスタが1492年早々のグラナダ、アルハンブ ラ宮殿の陥落で成し遂げられたことはまさしく、運命であった。が、16世紀、遅かれ早かれヨーロッパが世界征服へと乗り出すことは現在から見 て、歴史の"余りにも残酷な"宿命だったようにも見える。

そして彼らがそれを、主の思し召し=「明 白なる天命」であると大きな"錯覚"をしてしまったことを、今となっては誰が責められよう、「汝らの うち罪なき者 まず石をなげ打て」か、でも、あそこまでの破壊略奪殺戮 虐殺は何の象徴?、攻守入れ替わってても同じだった???。とまれ、その頂上決戦は20世紀まで持ち込まれ、一応の決着を見た、が...。

善 悪」とは何なのか、地獄への回廊を敷き詰めている「善」とは何なのか、善悪の峻別は大切、 だが、悪を決して許さず自分だけは善であろうとするとき人は、大きな間違いを犯す、「明白なる天命」を確信する、ように。

3. 「宿命のライバル」
ア ムロとシャアナルトとサスケ、 あるいは、ジョー と力石桜木と流川、 はたまた、セ ナとプロストメッシとロナウド...、 彼らは、たまたま同時代に同じ舞台で偶然出会った運命の邂逅なのか、それとも、前世からの因縁でその出会いの一点を目指して人生を生き抜いて きた宿命の対決なのか。互いが互いの前途に大きく立ちはだかる。

現在から見て、非西欧世界が列強に侵略さ れることは、歴史の残酷な宿命だったようにも見えるが、もし、8世紀前半フランク王国がカール・マルテルを 持たずトゥールポワティエでイスラムに敗北するか、また、13世紀ドイツ騎士団を 壊滅させたワールシュタットの後、モンゴルのオゴタイが急死しなければ、西欧は異民族 の手に落ちていただろう。

ローマ帝国亡き後のヨーロッパは、イスラ ムかモンゴルに征服される宿命にあった、が、運命的な出来事が味方する、それをやはり「神風」と呼ぶのか、彼らも。宿命のライバルの勝敗は、 その時々の些細な蝶の羽ばたきで決する?。

4.「明白なる運命」
そうすると宿命は、偶然の出来事や自ら切り開く運命で変えられるってこと!。...しかし英語では、宿命も運命も両方ともが Destiny(or Fate)、つまり、世界の切り方が違う、概念の成り立ちが違う、ほら、言葉は価値観の体系、考 察は概念が可能にする。では、彼らは Destiny をどう概念化し意識しているの?。

それは神の御心、宿命でもあり運命でもあ る、カルヴァンの予定説に依っていれば尚更、すべては Destiny、悩みようがない。新世界に渡り独立を達成し版図を広げルイジアナ買収を経てテキサス併合へ向かう19世紀半ばのアメリカ、「Manifest Destiny」という、いたって「理 性」的な論調が生まれたのは当然の流れだった。

そうそれは極めて理性的な主張、というか やっぱり、理性は感情の一部、感情的な熱狂を理性で理論武装する、それが近代的自我、自分の自分による自分のため物語を物語り、「明白なる運 命」を明白に確信する。

5. 「運命の悪戯いたずら
20世紀ヨーロッパでの2回の大戦は、大航海時代を端緒とする西欧諸国の爆発的膨張、植民地獲得を競う帝国主義の頂上決戦としての必然、宿命 だった。帝国主義への批判から生まれた(かに見えた?)共産主義ソ連が一枚噛み状況を見えづらくしているが、コリジョンコースをひた走り欧州 は激突し没落した。んっ、「明白なる運命」?。

両大戦ともアメリカが、少なくとも国民が 乗り気でなかった理由はそれ、関係ないよって。では、日本はどうなの?、あの「日米戦争」は何だったの?。アメリカをあそこまで駆り立てたの は「Manifest Destiny」の残滓、ハワイ併合、米西戦争によるフィリピン獲得から50年も経っていない。理性的感情的裏づけを持つ哲学、そう、「明白なる運命」!。

対して日本は、大東亜共栄圏?、それって ただの経済ブロック?、哲学が違う。受けて立つなら仕方ない、でも、打って出るとは!。「欧州 の天地は複雑怪奇」どころか、自分達が支離滅裂、あの戦争は本当に必然だったの?。

6. 「運命と書いて運命さだめ
が、第二次大戦でのアメリカの第一の敵はドイツ、あの原爆もドイツへの備えから開発した。それは、第一次大戦に萌芽する「民 主主義の守護者」という物語、国際連盟不参加という躊躇をへて、「Manifest Destiny」の中核へ躍り出る。理性が感情の核心的論拠を創造する、偉大な アメリカの生まれた意味を、運命的な建国の意味を。

時代は21世紀、テロや難民、一見混沌と している。が、宿命の対決がコリジョンコースに入る、米中決戦はありやなしや。「明白なる天命(民 主主義)」と「明白なる天命(中華思想)」の激突は必然?、運命的偶然によって回避可能?。やがて運命の女神が扉を叩く、そして 扉を開けた時、そこに佇んでいるのは...、運命の旋律が鳴り響く...♪ダダダ...

交響曲第5番 (ベートーベン)は、2005年秋のNHKホール「子どもたちのためのコンサート」での小澤征爾指揮N響演奏が史上最高、子供達の前で小澤はきっと「明白なる天命」を受けタクトを振 る、運命的な「運命」の動機。

7. エピローグとしてのモノローグ
「人間五十年 下天の内をくらぶれば 夢幻の如くなり」、16世紀、信長が 生き抜いてたなら、東南アジアに広がった日本町を足がかり、欧米列強の植民地獲得戦争に加わってただろうか。秀吉が采配した諸侯連合政権では なく、文字通りの信長中心の中央集権国家を作り上げてたなら、いち早く明帝国に侵攻し滅ぼしてただろうか。

その時、現在の日本はどうなってただろう か。現実は、女真人ヌルハチの後金が明を倒し大清帝国を建て、18世紀には中国史上最大版図を誇り繁栄した。が、現在、彼の故郷かつての満州 は、東北地方として中華人民共和国の一部、女真語を使う人は誰もいない。運命の女神の微笑みは憂いを含んだ笑み、運命って、何?、♪ダダダ ダーン...

心より出で – 願わくば再び – 心へと至らんことを!
Von Herzen – Möge es wieder – zu Herzen gehn!
From the heart – may it return – to the heart!





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