コラム:週刊モンモントーク
[13] 小論文は、なぜ「小」論文か−たとえば「格差社会」
1.「ブレスト」から
たとえば、テーマ型小論文、「格差社会」がお題。スイッチを入れ、一気にブレストに入る。時間は掛けても5〜10分。
「一般論」: 自由の尊重→自由主義経済→格差社会→結果の平等が問題に
「主張」: ベーシックインカム導入→結果の平等より機会の均等(平等)を!
「経験・見聞」: アメリカンドリーム←流動性のある社会=自由で平等、希望の追求
「知識」: 高度経済成長期の日本←人、もの、お金の移動=流動性、最も成功した「社会主義国」、一億総中流
「想定反論」: ベーシックインカムで、人は怠け者に
「切り返し」: 人は、希望があれば、それを追求するようにできている、教育の大切さ
「決めフレ」: 流動性は機会の均等から生まれる。
「結論」: ベーシックインカム導入で、機会の保障、希望と夢を追求できる社会に
☆ もちろん、ブレストのメモが、上のように整然と書けるわけじゃない。自分だけにわかるメモでよい。
2.「小論文」へ
格差社会への処方箋
自由と平等は、どちらも軽んじることのできない大切な権利だが、自由に重心を置いた経済政策が人々により繁栄をもたらしてきた。その結果、格差社会と言われ結果の平等が問題になっているのは皮肉でもある。しかし、問題とすべきは、機会の平等である。ベーシックインカム導入で機会の均等を保障し流動性を図ることで、格差はあっても問題とはならない社会を目指せるのではないか。
アメリカでは大統領選まっただ中だが、やはり格差は大きな争点だ。アメリカンドリーム、それは、あらゆる意味において社会の流動性が可能にしてきたものだ。自由に職業を選び、自由に経済活動をする。自由の国アメリカとも呼ばれるゆえんだ。それが固定化されつつあるという危機感から「私達は99%」デモが起こった。中産階級から脱落し抜け出せないという恐怖感がある。
日本でもかつて高度成長期には、ヒトの動きがダイナミックだったと聞く。一億総中流社会を作り上げ、最も成功した「社会主義国」とも言われた。流動性があるところには、人々の希望と社会の明るさがある。日々の生活に手一杯となり新たな挑戦が阻まれた所には、淀んだ絶望があるだけだ。最低限の経済保障で明日への希望が生まれ、流動性の回復につながる。
たしかに、ベーシックインカム導入で人々が怠惰になり、社会がより一層不安定になるという心配がある。しかし、大多数の人は希望が見出せれば、未来に向かって努力するようになり、生き甲斐とは案外そういうところにある。どのような社会にも問題があるが、より良い社会とは何かを常に問うべきだ。
流動性のあるところでは、格差は経済活動の原動力になる。そして、流動性は機会の均等から生まれる。人々は経済的、機会的保障さえ得られれば、自分の希望を追求し夢を追うようになる。その結果ダイナミックな流動性が、再び先進国でも生まれ社会に活力をもたらすだろう。人は、社会は、そういう風にできているのだから。 (文字数802)
3.「論文」へ
上記2.、基本的な5段落構成の小論文だが、以下の手順でいわゆる「論文」になっていく。
(1) 「一般論」=現状把握、分析を詳しくする。
(2) 「主張」を具体的に記述する。
(3) 「主張」の根拠となる、2・3段落に置いた「経験」「見聞」「知識」を付け加える。
(4) 4段落に置いた「譲歩」も、反論をさらに想定し、再反論する。
(5) 各段落のキーワード、キーフレーズを、詳しく説明する。
・ 1段落:「自由」「平等」「自由主義経済」「格差社会」「結果の平等」「機会の均等」「ベーシックインカム」「流動性」
・ 2段落:「アメリカンドリーム」「自由の国アメリカ」「私達は99%」「中産階級」
・ 3段落:「高度成長」「一億総中流」「最も成功した社会主義国」「希望」「絶望」
・ 4段落:「怠惰」「希望があれば努力する」
・ 5段落:「格差は経済活動の原動力」「流動性は機会の均等から」「先進国」「人や社会を動かすもの」
(6) 「主張」を実現する具体的方策を記述する。
つまり、「小論文」は、ただ短いという理由だけで「小」なのではない。「大」論文に発展する骨格を備えているから「小」なのだ。山間の湧き水が一筋の流れとなり小川となり、やがて大河となるように、大きなうねりを生み出すポテンシャルを秘めている、それが「小」論文。小論文とは、(大)論文のドラフト。
4. 「プレゼンテーション」へ
時間と字数が限られ、リサーチが許されない「小論文」では、ある程度の論理の飛躍は想定内。点と点がつながり線となり、面となって行く過程を、読み手に想像させられるか。その湧き出る想いや概念を形にし、相手に伝える「言葉」や「語句」や「表現」をどうひねり出すか。ブレストで、包括的な大きな概念、キーワードを有機的につなげられるか。
主張につながるひとつの大きな物語として、読み手の想像で、書き手の創造を共有できるなら、それは十分、「小」論文と言える。そしてそれを、リアルタイムで聞き手を前にして行うのが、プレゼンテーション。
作文・小論文教室詳細
このページのTOPへ 作文・小論文教室TOPへ HOMEへ