作文・小論文−入学・編入試験対策、さらに超えてその先へ

コラム:週刊モンモントーク

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[4] 考察の視点・座標を持つ

1.「普遍」の意味は変わった−普遍的な「普遍」はない−

万人が認める普遍的な価値観(=究極の真理)はない。歴史上、真理を求め真理を信じて、幾多の人が苦悩し、文字通り悶え亡くなった。それが人間性だから。しかし、「本当」を本当に掴まえることはできなかった。「真理」は遂に生まれず、これからも人が人である限り生まれえない。それが人間性だから。「真理はない」んだ。

問題、なぜどのように人は、「これこそ真理だ」「これが普遍的な価値観だ」と確信し思い込むのか。人は、本能的に社会を作る。そして、友人、家族から国家まで、集団の安定を維持しようとする力が、各集団の各段階で本能的に働く。すると、その力学から、「真実はこれだ」が、少なくとも、ある場所で一定期間、必然的に現れる。  

つまり、「普遍」とは、その時代のその社会のその状況で、ある集団が、「価値観」の統一を図るための概念だ。「普遍」は普遍的に求められるが、それは同時に「特殊」でもある。これが、ポストモダン社会での「普遍」の意味だ。

2.人は「社会的動物」だ−人は生物である限り本能に支配される−

人は社会を作り秩序を維持する、生存のために。人は「考える葦」である−他の「社会的動物」との違いだ。だから、価値観の統一を本能的に求める。異質な価値観とは本来危険なもの。集団を崩壊させ、生存を脅かす。歴史上、異質は徹底的に排除され、異端は、時には、外敵よりも憎悪を生んだ、秩序を守るために。生存のために。

人は、一定の価値観に基づいて、感じ考え判断し行動する。価値観の相違は、家族から国家まで、集団崩壊の危機をもたらす。古代ローマを見よ。異質な価値観が入り乱れた時、集団を、社会を、国家を守るため、終身皇帝が現れた。「共和制」から「独裁政治」への移行(!)による社会の安定化の努力、ここにも人間性の本質、生存への本能がある。

そして、運命の17世紀、「近代」の誕生。生存のため維持されてきた社会に、進歩と発展という概念が加わる。集団のために犠牲にされてきた「個人」が、よりよい生を求めて生きる「近代的自我」、「個性」の誕生。

3.座標軸を定めよ−何をどう考察し主張につなげるのか

異文化が、異質な価値観が入り乱れるグローバル化真っただ中の現代、かつて、「進歩と調和」と楽観的に謳われた理想的な未来は、崩れかけているようにも見える。そう、現代社会は問題で満ちている。しかし、だからこそ、21世紀のこの世界で、この状況で、人は、「個人」はどう生きるべきかの「普遍的価値観」を議論し続ける必要がある。

その時、自己の属する集団や社会の価値観、文化、歴史を知らずして、それは語れない。価値観とは、行動を引き起こす、感情や思考、判断の源だ。自分のその源を知り、時代を読み、考察し、磨きをかけること、これが、「座標軸」を定めるということ。自己を突き動かしている価値観とは何かを、客観的に見つめ、熟成させる。

視点が決まれば、主張は自ずから湧きいでる。人はそのようにできている。それが人間性だから。本質は、よりよい生を生きるため、自分にとっての、そして、属する集団や社会にとっての向上や発展とは何かを突き詰めること。

4. 補足−議論になる議論を−

では、なぜ人には、社会を作り集団の安定と秩序を維持しようとする本能―生存本能ーがあるのか。この問いに生物学的な意味はあるが、社会学的な意味はない。ただ、生物である限り人も、根本では本能に支配されていることを、常に確認しておくことには意味がある。

感情は、理性では制御できない。たとえば、怒りは、生存が脅かされたと感じて戦闘態勢に入る本能的現象で、現代社会では、じゃまになることが多い感情。しかし、その湧き上がる気持ちをなかったことにはできない。理屈と膏薬はどこへでも付く、理由は、理性による後づけに過ぎないのかも知れない。

だからこそ、感情的にならず、ためにする議論や反対のための反対は避け、「ニヒリズム」に陥ることなく前向きに議論を行いたい。集団や社会の発展と安定を人は本能的に求めている。それが、人間性だから。





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