コラム:週刊モンモントーク
[5] 独創的な「作文・小論文」とは
1.「主張」に独創性を持たせる?
独創的な小論文といってまず思い浮かぶのは、「主張」の独創性だろう。今までにない斬新な意見、問題の解決法。現代社会の諸問題に対しての、鮮やかな視点と具体的で実行可能な行動指針。素晴らしい小論文が目に浮かぶ。しかし、与えられた課題に対して、真に独創的な解決法を示せることは、超稀。
いや、高校生が、短時間で資料もなしにそれを提示できたなら、大学どころか、プロのシンクタンクからお呼びがかかるだろう。現実的で独創的な主張はそれほど難しい。もちろん、「小」といえども論文を書く以上、主張でもユニークであろうとする姿勢は正しい。しかし、考え抜いた上での“陳腐”な「主張」は、突拍子もないものより数段上。
2.「知識」に独創性を持たせる?
「主張」に根拠を与えるものの1つが「知識」。「現実は〜だ。だから〜」と、社会を見つめ考察し議論をし読書をして得た知識をもとに、論理を展開し説得力を持たせる。現代社会の諸問題を論じる場合には、ある程度の知識とキーとなる概念・言葉は不可欠であり正攻法とも言える。
しかしここでも、世間に知られていない知識や情報を、披露できる題材や機会は稀だ。むしろ、的確な知識や情報は、問題意識を持ち批判的に社会を考察していることの証明として、自己アピールとして盛り込みたい。もちろん、文脈の中で意味づけられた正確な知識や情報が、論文に説得力を与えることは言うまでもない。
3.「経験」に独創性を持たせる?
「主張」に根拠を与えるもののもう1つが「経験」。直接的な「見聞」も経験となる。「私の経験は〜だ。だから〜」と、自己の経験をもとに議論を発展させる。経験は、その個人にその場1回限りのものであり最もユニークなもの。そう、独創性が最大限に発揮できるのは、実は、ここだ。
しかし、知識や情報同様、いやそれ以上に、意味づけされていない断片的な事柄を、ストーリーの中に位置づけるのは難しい。だから、自分の経験を大切にし見つめ、その意味を探る。それが、問題意識を持ち批判的に自己を考察するという意味。1回限りの貴重な経験が意味を持った時、独創性が生まれ、同時にそれは、自己アピールにもなる。
4.「仮定」に独創性を持たせる?
知識や経験がピッタリこない時、「仮定」をする手もある。「もし〜ならば、〜となる。だから〜」と、現実で起こりそうな出来事を創作する。現在の自分や社会を分析し、そこから将来の自分や社会を論じる場合はもちろん、今を考える上でも、仮定法的にパラレルワールドを想像し考察する。
いずれにしても、想像力を駆使して現実的な創造をする以上、上記2.3.の知識や経験の裏打ちは欠かせない。でないと、空想を通り越して妄想に迷い込む。独りよがりにならないためにも地に足の着いた議論を。知識や経験をしっかりと自分の中で意味づけ体系化した上での、考察の広がりになる。
5. 「構成」「論理展開」「表現方法」に独創性を持たせる?
「構成」は、大きくは”序論+本論+結論”、そして、その本論を3段落にした5段落構成か、字数や時間によっては、2段落にした4段落構成、これがまずは基本だろう。「論理展開」も内容と構成により自然と決まる。いずれも、わざわざ奇を衒う必要はない。
「表現技法」も、論理展開の上で工夫はするが、それは、独創的な技法を使うことじゃない。接続詞や副詞は的確な配置を心がけ、呼応や比喩、故事成語などは、細心の注意を払って必要ならば使用する。ただし、最終段落の「決めフレ」は、常に意識しておく。
6.結局、独創的な「作文・小論文」とは(その1)→(その2)
「主張」と、それを根拠付ける「知識」と「経験」、それらを、「構成」に則って「論理展開」し説得力を持って書き上げる努力。独創性とは、作品全体から浮かび上がるユニークさを、本来、指すのだろう。「主張」に向かって、考え悩んだその過程を、若者特有の情熱感を伴って書く。考察するその過程にこそ意味があり、創造力の源泉となる。
その上でなお、「経験」の大切さは強調したい。入れられるならすかさず入れる。入試小論文は、自己アピールでもある。随筆に、日本で言うエッセイに近くなる所以だ。様々な問題が感じ方や考え方の違いから起こるのならば、価値観の違いとして意味づけ体系づけた自分の経験は、読むものの心に必ず響くはず。
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