作文・小論文−入学・編入試験対策、さらに超えてその先へ

コラム:週刊モンモントーク

前のモンモン  モンモンTOP  次のモンモン

[41] (続)「成功哲学」の本質

1.「合格体験記」というロマン主義
モンモン: せんせー、最近、私、「合格体験記」にハマってるんだよねー。

先生: ...ほーっ、それは、それは、そろそろ受験が気になってきたかな?。

モンモン: うん、「蛍雪時代」を取ってる先輩からもらったんだけど、何て言うか、スッゴイ面白いんだよね。おー、頑張ったねーって感じで、盛り上がり方っていうか、結局、ヤッターって感じで...。

先生: ...うん?...具体的には、どういうことかな?。

モンモン: 具体的にはァ、目標を持って計画を立てて、努力するんだけど、上手く行かない時も、というか、上手く行かないほうが多かったりして、それでも諦めないんだよね、で、最後には努力が実って、合格をゲットって...みたいな。

先生: ...なるほど、...しかしそれは、アメリカ流「成功哲学」そのものの考え方と実践だな...。

モンモン: えっ?、セーコー哲学?、あの、「夢」を具体的に思い描いて、んで、いつもポジティブでいれば、思考は現実化する(キリッ)、みたいの?、あれ、なんか胡散臭くない?、そんなに上手く行くの?、とか、それじゃ、空、飛びたいって思い続けたら、飛べるようになるの、とか...結局、何なの、あれ?。

先生: アメリカ文化そのものだな...。

モンモン: えっ!?、アメリカ文化!??。

先生: そうだ、自由と平等を理念とする社会で、まだ実現には程遠いとしてもな、自らの理想をどう追求するかの指南書だ。そしてその理想とは、まずは経済的成功だ、それをアメリカンドリームと呼ぶんだが、そして、良き父・母・隣人として、何よりも個人として自由に生きる、ってのがずっとあったんだろうな、古き良きアメリカ...かな。

モンモン: アメリカ建国の夢、みたいの?、アメリカの理想?、あまりうまく行ってない...よね、結局。でも、日本の受験と似てるのは、なんかわかる気がする。日本の受験ってある意味、アメリカよりずっと平等だもんね、どこを受けようと自由だし、実力次第で。目標に向かって努力、ってのが一緒なんだ、結局、「諦めたらそこで終了だよ」、みたいな?。

先生: そう、日米、真逆の文化を持っているように見える中で、自由と平等という点で一瞬、質もスケールも違うが、重なりあうのかも知れないな。個人が、抑圧というか圧迫を跳ね返し、ある種の理想を追求する姿勢に、ロマン主義的なものを感じるんだな。自由への渇望とでも言うのかな。

モンモン: 自由?、うん...だから、ワクワクするのかな、読んでて。その先にある自由を求めてって。主人公は自分で、物語の筋は自分次第で決まって、生きるってそうゆこと...なのかな、結局、意味があるってそゆこと?。主体的に関わって、ロマンを求めて、生きることに意味が生まれる、人は、そんなふうに出来てるんだ、結局は!。

2.「ロマン主義的写実主義」
モンモン: ...でも、何か、何か違くない?、何なの?、この気持ち、何かスッキリしない。受験って枠の中で競い合って、というか、競い合わされて、結局、他人を蹴落としただけ?、って考えたら、ちょっと虚しくなってきた...。

先生: 意味の喪失、かな、輝いていたものが突然、その輝きを失う瞬間だ。ものや出来事に元来、意味はない、人が意味づけていくってことがよくわかるな。

モンモン: で、その意味づけが、人の価値観で、それの集まりが、社会の文化ってことなんだよね。

先生: そうだ、そして、その価値観が揺さぶられた時...。

モンモン: あーっ、アイデンティティの危機ってこと?。「何か変だ、おかしい、それホント?、意味ないよ」って感覚が、沸き起こって、懐疑論になって...。

先生: 行き着く先はニヒリズムだな、批判的思考による「方法的懐疑」でない限りは...。

モンモン: ニヒ...リズム?...?。

先生: すべてに意味はない、つまり価値もない、っていう考え方だ、生きることにもな、虚無主義って訳される。ニーチェは「神は死んだ」と宣言し、20世紀と21世紀はニヒリズムの時代になるって予言したんだ。実際、その通り、当たっているようにも見える。

モンモン: えーっ、人間の精神の危機って、ずっと続いてるんだ。 と言うか、人が人である限り、どうしようもないのかな、「死に至る病」とかあったよねー、死に至る病とは絶望のことである、とか何かカッコいいよねー。

先生: それは、キェルケゴールだな。...ただ、ニーチェの結論は、だから人は勇気と知恵を持ち人生を切り拓け、というニヒリズムの肯定になるんだ、「積極的ニヒリズム」と言っているがな。

モンモン: 何それ?、何でもありだね、言ったもん勝ちって感じ...。

先生: 自身は影響を否定しているが、アイン・ランドのいう「ロマン主義的写実主義」も同様な意味なんだろうな。

モンモン: えっ?、ロマン主義と写実主義?、どゆこと?、写実主義はロマン主義への反発から生まれたんじゃ...、そんな"ロマンチック"なこと実際に起こるわけない、現実を見ろ!、って...!?、...現実を...!?....現実...!?....。

先生: そう、現実...だ。ランドの哲学は、主観とは独立した、世界それ自体としての客観が存在するって考えで、認識論的には後退だが、"現実"社会を生きるには有効・有益だな、特に個人に焦点を当てるアメリカ的社会では...。

モンモン: 現実を見つめて、批判的思考で、その上で、生きる意味のようなのを、理想を、各自、追い求めろって?、平凡だけど、目標を決めて努力しろってこと?、なぜ生きるのかって問いの答えがそこにあるから?...結局は!?。

3.「自己実現」というロマン主義
モンモン: でも、何のためって問いは消えないよね。成功って何なんだろ?、志望校合格ってのも、もちろん、ひとつの成功なんだけど、それで上がりじゃない、次の新目標を定める?、自然と現れる?、どっちにしても、生きてる限り繰り返しなの、本当の意味でヤッターって感じで、このために生きてきたってものに、いつか出会えるの?...結局。 

先生: 真の「自己実現」は可能かって問いだな。自由と平等を基本理念とする社会でなら、その可能性の追求は可能だとされる。そして、それが自由の概念だ...。

モンモン: 可能性の追求は可能、って意味分かんない...。

先生: ただ、その社会の価値観、文化にある程度縛られはするがな...。

モンモン: 縛られるの?、じゃ、自由って言えない...?。

先生: そこだ、自由とは何かってこと、すべてのしがらみからの自由って状態が、それこそ、可能なのかってことだ。

モンモン: うん、そうだった、自分勝手との違いだね、責任を伴う自由、だよね。でも、その責任って誰に対する責任なの?、というか、今思ったんだけど、「自己実現」って言うの、自己を実現するキャンバスって言うか、安定した社会が必要だよね。安定した社会って、結局、文化的に安定してるってこと?。

先生: 経済的、文化的にだな。貧すれば鈍す、悲しいが、貧しいことろに文化は育たない...。経済的な豊かさが、ある程度行き渡っていて、文化の成熟があってこその「自己実現」って概念だな。

モンモン: それが、その文化の持つ価値観に縛られるって意味?。だとすると、その文化にピッタリあった人って言うか、そういう人が、成功っていうか、自己実現しやすいんじゃないの?。

先生: そうだ、個人の性格や資質や価値観が、その社会の制度や文化や価値観と親和性が高いほど生きやすく、低いほど生きづらいとも言えるな、というか、だから教育がある。学生時代とは、その社会へ出ていくためのオリエンテーション期間とも言える、教育現場は社会の縮図と言われるゆえんだな。

モンモン: てことは、セーコー哲学って、その社会の文化や価値観を、どれだけ分かってて、どれだけ自分のために利用できるかってこと、結局?。

先生: 成功の定義を、まずは経済的な成功に限るとそうとも言えるな、その文化に最適に適合した者が最大の利益を得る、と考えるのが理屈に合うな。人間集団が繁栄するための装置を、その構造を文化と呼んでいるのだから。

モンモン: てことは、みんな「セーコー哲学」、やってんじゃないの?、フツー、学校、行ってるし、「諦めずに頑張りなさい!」とか「もっと明るくハキハキと!」とか「将来の夢は何!?」とか、しょっちゅう言われて...。

先生: ...なるほど...、しかし、能動的か受動的か、意識的か無意識的か、は、やはり大きいな。そして、社会の文化や価値観は、ゆっくりではあるが、必ず変化するというのも大きいのかな。学校で習うのは、過去から現在までの知識や知恵だから...。そして、その変化の最先端にいる者が、理想を追い新時代を切り開いて行くのだから...。

モンモン: そうか!、てことはまず、能動的で意識的であること、だね。んで、何て言うか、その変化の先頭って、新しい価値観が生まれてるトコでしょ?、てことは、「私」がそれを生めば、「私」の価値観が、社会の価値観や文化になって、「私」にとっての、理想的な社会になるよね。それが、究極の「自己実現」なの?、ロマンなの?...、結局は!?。

4.エピローグとしてのロマン主義的ダイアローグ
モンモン: せんせー、でも、自分の価値観がそのまま社会の価値観って、怖すぎない?、「私、最強!」って感じで、「神、降臨」って...、結局、独裁者になっちゃう...。

先生: というか、大きな社会や国の価値観と個人の価値観がまったく一致することはあり得ないな、それを試みて悲劇的失敗をしたのが、前世紀の共産主義国家だ。社会や国家は価値観が多重に積み重なって出来ているし、個人でさえ、多様な価値観の集合体とも言えるな。

モンモン: てことは、いつかある時のどこかある場面で、必ずどんな人でも「自己実現」できる可能性はあるってこと?、その多く重なってる価値観の網の目の中で?。それが、創造的に生きるって意味?、そんな状態に人は、ロマンを感じるってこと?、それが人間性なの?...結局は!。

"When you give up, that's when the game is over."





前のモンモン  モンモンTOP  次のモンモン

作文・小論文教室詳細

「作文教室」詳細  「小論文教室」詳細  「作文・小論文添削面談」詳細


このページのTOPへ  作文・小論文教室TOPへ  HOMEへ

↑ PAGE TOP