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コラム:週刊モンモントーク

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[40] 「成功哲学」の本質

1.Think and Grow Rich」
成功哲学の祖とも言われるナポレオン・ヒル、鉄鋼王カーネギーとの出会いが彼の人生を変え、「思考は現実化する」(1937)を出版、が、この邦題、ミスリーディングだよね、二重の意味で。"Grow Rich"は、文字通り、「富を増やせ」でしょ。Richには精神的な豊かさも含むんだってのは、ちょっと穿ち過ぎかな。つまり、「成功」は経済的な成功。

百年前、19世紀後半から20世紀前半のアメリカ、石油王・鉄道王・新聞王など、〜王と呼ばれる大富豪が続々誕生、いわゆるアメリカンドリームの体現者達、その成功方程式を体系化したのが、ヒル。エッセンスは、具体的目標とポジティブ思考、ほら、"American"だね、「成功哲学」は「哲学」じゃない、それは、アメリカでの成功の仕方の「指南」。

では、何のために経済的成功を目指す?、決まっている(いた?)、よきキリスト者として生きるため、家庭で、社会で、篤志家による寄付の文化もここが由来、「哲学」はキリスト教、「手段」が富、ほらね、本質は、アメリカ文化論だろ。

2.「Atlas Shrugged」
アメリカの保守層を中心に絶大な影響を与えてきたアイン・ランド、ロシア革命が彼女の運命を変え、共産主義を筆頭に中央集権的な大きな政府を嫌悪、夜警国家の下での徹底的な個人主義を提唱した。“天を支える巨人アトラス”が肩をすくめるぞと脅し、考え努力する個人が、最大限能力を発揮できる自由な資本主義を徹底擁護する。

それは、夢を追うアメリカ流起業精神そのもの、「成功哲学」を当然の生き方と捉え、政府の役割を最大限抑制する、邪魔をするな、と、レッセフェール、悪いようにはしない、私達の理性を信じろ、と。が、「客観主義」と呼ばれるその思想は、その自らの世界観に基づく客観(アメリカ的社会?)があるとも取れる自己矛盾、ほらね、ここでも、文化論。

が、ランドは神を信じない、理性に最高の価値を置く、そう、共産主義と根は同じ、うん、コミュニズムとリベラリズムは一見対極にある双子の姉妹、そう二つとも、「過剰な理想主義」の追求の果ての物語、やがて終わりの来る物語。

3.「Think Different
人の「理性」を信じ、そこに最高の価値を置く思考は、実は考えているようで考えていない。中世の大学、神学論争の下、天使の数を数えることに一生を費やすことは思考の訓練でしかなかった、現代でも同じような状況に陥っている人は多い。ヒルやランドを読むことも思考を確かに活性化させる、が、その後に創造が続いてこそ本物の思考。

かつて日本のSonyに憧れた、Appleのスティーブ・ジョブズは、97年に"Think Different"とCMを打った時すでに、今日のアメリカの情報通信産業の、そして、自社の隆盛を確信していたのだろう。それは、ヒルを育み、ランドを受け入れたアメリカ社会の通奏低音となって流れる旋律、自由の精神の必然の結果、やはり、日本では無理だった...。

ヒルもランドもジョブズも、そして、Sonyの盛田昭夫も、言いたいことは同じだろう、新しい価値を創造せよと、そのために、感じろ、そして、考えろと。アメリカと日本、何がどう違ったのか、ほらね、本質は、日米文化論だろ。

4.エピローグとしてのモノローグ
つくづく思う、元を辿れば99%以上が移民の国アメリカは、人工的に造られた実験国家なのだと、共産主義の実験が、帝国にまでなった伝統国家ロシアではなく、人工国家アメリカで行われていたらどうなっていたのか、と。

つくづく思う、しがらみを解き放たれた時、人はどう生きるのかと、宗教は、道徳は、人の本質はどう変わっていくのか、その時、成功の定義は、本質はどうなるのか、真に自由な存在となった時、それでも人は成功を求めるのか、と。

「その黄金の林檎を取ってきてくれ、その間、私がこの天を支えていよう!」





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