コラム:週刊モンモントーク
[47] 21世紀の危機−17世紀2.0?
1.「17世紀の危機」:宗教改革-宗教戦争という欺瞞
95ヶ条の論題から100年、アウクスブルクの和議から60年、1618年、最後にして最大の"神権"を巡る戦争、三十年戦争が勃発。08年には新教国オランダが旧教国スペインより事実上の独立を勝ち取り、その前哨戦の様相を呈していたが、寒冷化に伴う経済危機を背景に、1世紀に渡った新旧キリスト教徒の抗争はクライマックスを迎える。
神聖ローマ帝国ハプスブルク家とフランス王国ブルボン家の両旧教家の対立や周辺諸国の利害を巻き込み、思惑と欲望が渦巻く大戦争に発展、デカルトは旧教側で従軍、途中、学問的啓示を得、後、チューリップバブル(珍種は市民の年収の数倍!)に湧くオランダで、ガリレオ有罪(地動説への異端審問)の報に接し、新刊の出版を躊躇する。
48年、ヴェストファーレン条約が締結された時には、ドイツ地域の住民は3分の1に激減、神聖ローマ帝国は有名無実化、魔女狩りが吹き荒れ、イギリスではピューリタン革命が進行、価値観の崩壊、「正しい」行いって何だっけ?。
2.18世紀の危機:啓蒙思想-「正しい」戦争という欺瞞
新大陸への流れが加速するのも道理、スペイン、ポルトガル、そして、オランダが没落停滞、前世紀に2度の革命を経た立憲君主制のイギリス帝国と、絶対王政のフランス王国が、第2次百年戦争とも呼ばれる勢力争いを、植民地でヨーロッパで繰り広げ、啓蒙思想の普及に伴い、世紀の後半にはアメリカ独立革命、フランス革命と続く。
1707年、富士山が噴火した日本、元禄文化を生み出した時代が去り、泰平の世を貪りながらも社会は停滞する。江戸時代の三大改革は"改革"でなく、時代を進ませない"反動"、無為に18世紀を過ごし新世紀を迎えることになる。
3.19世紀の危機:帝国主義-理性的な戦争という欺瞞
皇帝ナポレオンの登場と共に始まった19世紀、アウステルリッツの三帝会戦に勝利、800年続いた神聖ローマ帝国を解体、ヨーロッパをほぼ制圧(07年)、が、ロシア遠征に失敗(12年)、失脚(14年)。戦後処理はウィーン会議によるウィーン体制、正統主義という勢力均衡を図る驚きの旧体制維持(いいの、それで?)、ひとまず危機は去った。
が、ヨーロッパの安定は、他の世界の危機、列強は海外進出を侵略をさらに進める。極地高山地域以外の人の住める地には白人が現れ、圧倒的な武力で植民地化を遂行、議会の承認を得た理性的な「正しい」侵略、キリスト教と啓蒙思想と文明を武器に、向かう所敵なし。19世紀の危機は非西洋諸国の現実化した危機。
19世紀後半までに、改革を進め近代国家としての体裁を整えられない国は、20世紀始めまでにはほぼ宗主国を持つ植民地となった。そして、非西洋諸国で近代化を成し遂げられた国は、和魂洋才の日本だけだった。
4.20世紀の危機:2つの世界大戦-正義の戦争という欺瞞
大英帝国は「栄光ある孤立」を転換し、前世紀後半の普墺戦争・普仏戦争をへてドイツ帝国とフランス共和国は因縁の睨み合い、シベリアを獲得したロシア帝国は不凍港を求め「南下政策」を取り、海の向こうアメリカ合衆国は「モンロー主義」とは言いながら拡張政策を続け、極東では、"Rising Sun" 大日本帝国が勢力伸張を図る。
帝国主義によるアフリカ分割はほぼ完了、複雑な同盟関係を築き勢力均衡を図っていたが、どう考えても、どう見ても、最後の決戦、やる気満々でしょ。そして、オスマン・トルコ帝国の弱体化による力の空白が、それに火をつける、サラエボでのオーストリア・ハンガリー帝国皇太子夫妻への銃弾、空前の大戦争...結果、帝国が4つ土崩、崩壊。
おそらく第一次大戦(欧州大戦)は歴史の必然、人類は戦争を初めて本気に反省した、戦争は人類への罪だと、ようやく初めて確信した。だから、第二次大戦は避けられたはず、「正しい」理性が感情を抑えられてたなら...。
5. 21世紀の危機:情報過多-冷たい戦争2.0という欺瞞?
ベルサイユ条約から100年、世界人権宣言から70年、おそらく最後にして最大の"人権"を巡る争いが始まり、30年は続く。16年には英国EU離脱、トランプ大統領の誕生と前哨戦が始まったが、17世紀に萌芽し20世紀に国際連盟・連合で一応の結実を見た人権的理想の追求は、温暖化という環境問題をも巻き込み、大きな転機を迎える?。
理性が生み感情的に熱狂した理想的平等社会、共産主義は瓦解し、グローバル化・自由主義の下で人権を全面に押し出し平等を標榜するリベラルの主張は形容矛盾にも見え、科学技術によるバラ色の未来は色褪せ、「あんた達だけズルい!」という、未だ?理論的根拠を持たない怨嗟の声が沸々と沸きい出る、価値観の崩壊、17世紀2.0?。
膨大な量の真偽不明な情報の中で、真に必要な事実や背景は報道しないという欺瞞、大国間の紛争は抑止されるが個人的テロの頻発、人間存在の意味を問う人間の危機、文字通りの"冷たい"戦争、「正しい」行いって何...?。
6.エピローグとしてのモノローグ
思えば人類はいつだって危機といえば危機だった。いつも誰かが存亡の危機に瀕していた。そして、多くが滅びていった。歴史に大きな足跡を残し忽然と消えた人々、何の痕跡も残さずひっそりと登場しひっそりと消えた人々、それぞれがそれぞれの過去を持ち現在を生きたはず、が、未来はやって来なかっ...た。彼らは「悪」だったの?。
ただ、人類全体が絶滅の危機を迎えたのはトバ・カタストロフの時だけ、7.5万年前、数千にまで減少した人口が今世紀中には、100億を超える。それぞれがそれぞれの価値観を持つが皆、その末裔であることだけは、確か...な。
空高し 舞うは鳶か 鷲 鷹か...な (人類滅亡の朝に一句)
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