コラム:週刊モンモントーク
[25] 「グローバル化」−テーマ型小論文二題
1.一題、「グローバル化:過去と現在」―小論文―
(1) まずは:ブレスト
「一般論」: グローバル化←世界がひとつになっていく現象
「主張」: 16世紀からが第一次、侵略、弱肉強食
「経験・見聞」: ∅
「知識」: 人類の移動はDNA、13世紀モンゴル帝国、16世紀からはヨーロッパ文明
「想定反論」: ∅
「切り返し」: 日本、鎖国、和魂洋才、連盟、G7、日本文明
「決めフレ」: 激動の世界を生き抜く知恵は、今も昔も同様
「結論」:文化を大切に堂々と
(2) そして:小論文
グローバル化:過去と現在
世界をひとつに結びつけようとする活動を「グローバル化」と呼ぶなら、16世紀の大航海時代から始まる「第一次グローバル化」とも呼べる波は、その後の植民地獲得戦争と19世紀の帝国主義につながり、前世紀の二つの世界大戦でクライマックスを迎えた。それは、徹底的な侵略戦争と植民地化を内包しており、今日のものとは一線を画している。
移動手段や通信技術の発達を待つまでもなく、常に人類は地球上を移動し、有史以前から居住可能な土地にくまなく進出していた。それは人類のDNAなのであろう。13世紀のモンゴル帝国の成立は「準グローバル化」とも呼べる画期的な出来事であった。「世界史」の始まりとも言える。その後に続く、西欧列強の世界進出とともに、その原理はあからさまな弱肉強食であり、人権のじの字もなかった。
冷戦期の45年間を挟み、アメリカナイゼーションとも呼ばれる「第二次グローバル化」が、1990年代に始まった。16世紀から、覇権国がスペイン、イギリス、アメリカとソ連、アメリカと変わったが、「ヨーロッパ文明」がこの500年間、世界をリードしてきたことに変わりはない。その中で、異彩を放っているのが日本の存在だ。
「第一次グローバル化」の初期は鎖国で国を守り、その後の抵抗しがたい帝国主義の波には、和魂洋才で西欧化に成功し国際連盟では常任理事国を務め、戦後は驚異的な復興でG7に名を連ねている。半世紀前までは人種差別が当然の世界で、日本の存在感は強烈だ。第二次大戦という悔やみきれない失敗もあったが、「日本文明」とひとつの独立した文明に括られることを誇りに思う。
今日のグローバル化では、多くの国で、自由・平等に代表される基本的人権が保障されており、先進国同士の戦争はないと言われている。しかし、激動の世界を生き抜く知恵は同じだ。世界情勢を見極めつつ、異文化を尊重しながらも、自国の文化を大切にし堂々と世界と渡り合うことだ。 (800字)
2.二題、「グローバル化:アメリカと日本」―小論文―
(1) まずは:ブレスト
「一般論」: グローバリゼーション=アメリカナイゼーション
「主張」: アメリカ国内でも賛否は分かれる、対処の仕方が国ごと
「経験・見聞」: アメリカ→英語、自国文化、有利 but 国内の格差→内向き指向へ
「知識」: 日本→ハイコンテクスト社会、英語ハンデ→ガラパゴス化←元来、内向き指向
「想定反論」: グローバル化、止める?
「切り返し」: 国家間格差→国内格差←グローバル化に挑むしかない
「決めフレ」: グローバル化は諸刃の剣
「結論」: アメリカ→覇権国家の特権、日本→正々堂々と真正面から全力で←日本文化
(2) そして:小論文
グローバル化:アメリカと日本
グローバリゼーションはアメリカナイゼーションと揶揄する人もいるが、現大統領候補が二人ともTPPに反対であることを見ても、アメリカと言っても様々な立場の人がおりひと括りにはできず、人それぞれ、グローバル化の意味は違う。これは日本も同じだ。しかし、グローバル化の進展とともに顕著化する、格差に代表される諸問題への対処の仕方は、文化によって変わるだろう。
アメリカでグローバル化の恩恵を受けている勢力は、世界を舞台に自国語(英語)を共通言語とし、自分達の文化の延長線上で活動しており、かなりのアドバンテージがある。だからこそ、アメリカ国内に残された製造業等で働く人との格差がますます広がっていき、「アメリカ・ファースト」がそういう人々の琴線に触れる。アメリカ国内の内向き指向の力の源だ。
対して日本は、アメリカ的文化とは対局にあるハイコンテクスト社会であるとともに、グローバル社会では、英語という日本語とは180度かけ離れた構造を持つ言語をある程度マスターせねばならないハンデもある。「ガラパゴス化」という言葉が如実に物語る通り、この20年間、グローバル化の波に乗りきれたとは言いがたい。日本は本来、内向き志向の文化なのだ。
もちろん、新興諸国が先進国並みの豊かさを求め追いつき追い越せという世界で、グローバル化に背を向けることはできない。彼らが国家間格差を縮めようとすればするほど、先進国内での経済格差は広がっていく。その差を許容できる範囲に抑えるためにも、自分達に最もあった仕方で、グローバル化に果敢に挑むしかない。
グローバル化は諸刃の剣だ。アメリカはこれからも表に裏に腕力に任せ、自国有利に条約を結ぼうとするだろう。衰えつつあるとは言え覇権国家の特権だ。日本はどうだろう。今回のリオ五輪で日本選手団が見せたように、正々堂々と全力で正面から愚直に取り組むしかない。それが、日本文化なのだから。 (792字)
3.おまけ、「グローバル化:-2.0と -1.0」―エッセイ―
20万年前にアフリカの地に誕生した時、人は格差(動物)社会の底辺であがいていた、「スカベンジャー」であったとも言う。 ミトコンドリア・イブの優しい腕に抱かれた明日をも知れないあどけない笑顔と、夕日を見つめるY染色体アダムの厳しい瞳...。やがて、10万年の時が流れ、生きるために食糧を求めて、一部の群れが「出アフリカ」を敢行。
アラビア半島からイランへ、インドへ、その時、スマトラ島トバ火山が大噴火、7.5万年前、「トバ・カタストロフ」として知られる。 「核の冬」にも匹敵する地球気温の劇的な低下、一気に氷河期へと突入、100万人まで増えていた人類は1万人以下まで激減、絶滅の危機。 宗教心は芽生えていただろうか、なんという不条理、神を呪っただろうか。
それでも人は生きる。 火の使用はすでに知っている、衣服を考案、針と糸を発明。 そして、「行こう、あの地平線の向こうへ」、再び移動を開始、「自由」を喚起する人の生き様の原点。 海水面が下がったベーリング地峡を通ってアメリカ大陸へも進出、 また、広大な草原の広がるシベリアで、北米大陸で、マンモスと出会ったのもこの頃...。
1万年前、最終氷期が終わる、すでに人は南アメリカ大陸最南端ホーン岬に達し、温暖化に伴い世界各地では、農耕・牧畜がまさに始まろうとしていた。 かつての同胞の存在を全く忘れて、すべての人類が、あの「トバ・カタストロフ」を何とか生き抜いた、たった数千人の末裔であることを全く忘れて...、 「歴史」が始まる。
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