作文・小論文−入学・編入試験対策、さらに超えてその先へ

コラム:週刊モンモントーク

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[48] 読解力の正体

1.「新潮の夏、日本の夏」
「金鳥の夏〜」だっけ?、今調べたら...、でも、学生時代の読書とくればやっぱり夏休み、緑豊かな田舎で、高原の避暑地で、行きの車中で、旅先のプールサイドで、海の見える喫茶店で、そしてもちろん自宅でクーラーを効かせて、キンキンに冷えたスイカと氷が光るカルピス、喧しい蝉の声と飛行機雲、車軸のような夕立の後の燃えるような夕焼け。

自分が存在する確かな現実世界と、本の中の仮想世界が相互に干渉し、新たな何かが無意識的に生まれてる、だって、世界の認識は概念の積み重ね、概念が概念を呼び、相互に絡み合い新たな世界観を編み上げていく、だから、その心の声に耳を澄ませば、「サヨナラ、少年の僕、少女の私」との囁きが聞こえるかも、聞こえたかも。

だから読書感想文は、無理に書かせちゃダメ、その新しい世界を見つけたという想いをどうしても誰かに伝えたくなる瞬間が来るその時、その変化に気づいたら、さり気なく「書いてみれば?」と控えめに勧めてみればいいだけ。

2.「徴候的読解」
何度も読み返したくなる本ってどんな本、と言うか、そんな本ってあるの?って、本に出会って人生が変わったとか、って人、いるの?、って昔、誰かが言ってた、けど、で、必ず批判されるって、本当の本の読み方を知らないって、でも、そんな本あるのかって、錯覚じゃないのかって、たかが本だろって、何言ってんだって、その人は憤ってた。

でも、この現実世界がその文化を背景に、自分の経験によって概念化され意味づけられ世界が立ち現れるのなら、現実での経験と読書での経験は、脳への刺激という点では、同じはず。現実と虚構の相違は、違うから違うと言い聞かせるしかない、と言うか普通、無意識的にそうしてるはず、映画なんか見てもね。

だとすれば、現実世界が次々とお互いの脈絡を無視して現れるように、本の世界も著者の意図を無視して、その時の自分の価値の構造の中で概念化し意味づけてもいいはず、と言うか脳は、無意識的にそうしてるはず。

3.「閃き」の正体
「馬上枕上厠上」と言われる、乗り物に乗ってる時、床に就いた時、トイレの時、に考えが纏まりやすいってこと、それって、断片的と思われた知識や概念が、関連性を帯びるってこと、混沌としてた生の事象がひとつのストーリーと意味を持つってこと。そしてその意味が、他人と共有され「いいね!」となれば、新たな価値が文化が、生まれるってこと。

「閃き」って脳が、概念と概念を組み合わせて物語を完成させること、想像・空想・妄想の力で、新たな創造をすること、ボーッとしてる時、リラックスしてる時、それはやって来る、お風呂なんかもいいよね。その究極が寝てる時の夢、無意識の顕現、夢で文字通り「夢」を叶えた人もいる。さらに究極の究極が、極限状態にある時の天啓や啓示?。

人の脳はそんなふうに出来ている、明日を想う概念化の能力を手にして以来、そうせずにはいられない脳の性。文化観が世界観が深いほど、概念化の網の目が細かいほど、感受性が豊かなほど、「普遍的」な閃きが光る。

4.読書の破壊力
だから読書をせよ、ということになる。個人の経験は、文化や価値観に縛られ、と言うか、そうじゃないと生活できないんだけど、案外狭く浅い。「愚者は経験に学び 賢者は歴史に学ぶ」と言うがそれは、自分の経験を意味づけ体系づけるにはまず、他人の経験(社会的背景)を知れ、ということ。経験を積んだ自分の経験にはもちろん、学ぶ。

経験的に世界を組み立てるイギリス経験論から懐疑論が、合理的に世界を組み立てる大陸合理論から独断論が生まれるのなら、そうならないために、自分の経験を文化や社会の中に、合理的に位置づける必要がある。その時、自分の経験に、ひいては、自分自身に意味が生まれる、というか脳は、意味を物語を生まずにはいられない。 

読書の本当の力とはそれ、ワクワクとかドキドキとか感動とか知的刺激とか眼から鱗とか、全てそれ。新しい見方、価値観の獲得、さらに深みを持って社会や自分が見えるってこと、文字通り新しい世界が、目の前に広がるってこと。 

5. 読解力は読"界"力
読解とは、そのテクストを生み出した文化や価値観をも読み取るということ、時代背景をも考慮に入れ、普遍的な何かを汲み出そうとすること。その上で、自分の今を重ね、本来、意味のない世界や意味のない自分を意味づけ、未来に想いを馳せようということ。だから読解力は、世界を読み解く力、読"界"力に繋がる。

事実は小説よりも奇なり?、現実世界はより複雑?、いや、事実は如何ようにも意味づけ出来るってだけ。書かれたテクストは、現実をある視点から切り取り描写する、と言うか、そうしないと何も概念化出来ない。だから、テクストを読み込み、時代の価値体系を読み解け、そしてそこに、貴重な自分だけの体験を位置づけるんだ。

が、現代科学文明の根底に流れるその価値観は、17世紀の西欧で生まれたもの。非西洋世界の人間は、自国文化の何たるかを意識的に読解=読み解いておく必要がある、でないと、意味の喪失=自我同一性の拡散の危機...。

6.エピローグとしてのモノローグ
でもまあ、面白いから読むんだよね、読了時のあの何とも言えない感じ?。脳って常に刺激を求め続ける、何なんだろね、これ、活字中毒って言葉があるけど、〇〇中毒ってのは、脳が刺激を求め我慢できないってこと?。

でも、夏休みも終わろうとする午後、秋の気配が吹き抜ける三階の図書室の窓際の椅子に座って本を読む、そんな貴重な時間が持てるのなら、生き方がちょっと変わったよ、とかカッコつけてちょっと言ってみても、いいかな?。

♪夏が過ぎ 風あざみ 誰のあこがれに さまよう...





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